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ディベート形式で考える暫定税率(廃止派編)

(マリン)

 ディベート形式で考える暫定税率、第二回目は暫定税率廃止派の論理を見ていきます。前回のエントリーでは、暫定税率復活派の主張として、「2008年度は暫定税率の税収を前提にして予算が組まれているため、暫定税率が廃止されると2.6兆円程度の税収減となり、予定されていた多くの公共事業が財源不足で執行できなくなってしまう」というものを紹介しました。これは主に政府および与党が使っている復活のロジックです。今回は、このロジックに廃止派の立場から切り込んでいきます。

 廃止派は、「暫定税率分の2.6兆円がなくなっても大きな問題は生じない」ということを立証する必要があります。今回は廃止派のなかでも最もラディカルな「暫定税率分2.6兆円の穴埋めを一切行わない」というケースについて考えてみます。

 穴埋めを行わないとすると、道路予算のうち暫定税率分の2.6兆円を圧縮しなければなりません。平成20年度予算では、道路関係の予算として計上されたのは7.7兆円ですから、ここから暫定税率分がなくなると、道路関係予算は33%減の5.1兆円となります。この5.1兆円の範囲内で、道路建設・道路整備の計画を再検討し、優先度の高い事業のみを行っていくという方法があり得ます。再検討の段階で優先順が低いと判断された事業については、建設に着手したものであっても計画を白紙にするなどの踏み込んだ対応が求められます。自治体の反発は間違いありませんが、「予算が減ったのだからどうしようもない」と突っぱねれば、自治体はなにもできないでしょう。

 道路計画が中止になるケースは決して珍しくありません。今年3月には、東京湾口道路、伊勢湾口道路など6つの道路計画が中止になりました(詳しくはhttp://www.news.janjan.jp/government/0803/0803290793/1.phpを参照)。東京湾口道路計画には調査費としてすでに68億円が投入されていました。計画中止によって68億円がムダになったわけですが、数千億円をかけて必要性の低い道路を造るよりは良かったのではないでしょうか。すでに事業が動き出し、税金が投入されている道路計画でさえも見直しが可能なのですから、暫定税率の期限切れが、我が国の道路建設の必要性を再検討する重要な契機になり得たことは間違いありません。日本の公共事業費は、国際的に見てもかなり高い水準にあります。少し古いデータになりますが、OECD/Economic Outlook74,National Accounts 2003によれば、GDPに占める公共事業の割合は、米国が2.3%、英国が1.2%、ドイツが1.7%などのところ、日本は4.9%と突出して高い数値となっています。

 日本の道路整備が、他の先進各国から大きく遅れをとっているのだとすれば、この数値の開きは当然と言えます。しかし、国民の実感はどうでしょう。多くの国民が、不必要な道路が造られていると考えているのではないでしょうか。暫定税率が廃止された場合、公共事業の水準は他国の水準に近づきます。そもそも暫定税率は、1970年初頭のオイルショック時の緊急対策として設けられた制度です。「暫定税率」というぐらいですから、2年間の限定になる予定でしたが、自民党の土建政治にうってつけの制度だったため、現在まで30年以上も「暫定」状態が続けられているのです。以上のことを考えると、暫定税率は廃止されて当然であり、暫定税率分の2.6兆円がなくなったところで、政府がリーダーシップをとって計画の見直しを行えば容易に対応できる、ということになります。これが最もラディカルな廃止派のロジックです。

 暫定税率をめぐる賛成、反対の立場を2回に渡って紹介しましたが、ここで紹介した以外にもさまざまな意見があります。たとえば、暫定税率は維持するが、税金は環境税として徴収し、道路建設ではなく環境対策に税金を使うべきだという政治家もいます。道路特定財源の一般財源化についても、近日中にエントリーしたいと思いますので、読んでいただければ幸いです。僕の立場については、次回のゲンダイモンダイのニュースコーナーでしゃべりたいと思ってますので、ぜひポッドキャストを聞いてみてください!

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ディベート形式で考える暫定税率(復活派編)

(マリン)

 マリンです。昨日から暫定税率が復活。暫定税率は本当に復活させなければならなかったのか。復活派と廃止派それぞれの立場に立って、暫定税率を論じてみたいと思います。今日は、暫定税率復活までの手続きと、暫定税率復活派の論理を紹介します。

 自民党は、暫定税率を復活させるために、暫定税率の期間延長が明記された「税制改正法案」を、衆議院で3分の2以上で再議決する必要がありました。手続き上、衆議院で通った法案を再議決するためには、参議院で法案が否決されなければなりません。しかし、「税制改正法案」は参議院で審議が止まっていて、当分議決されそうにない。そこで自民党は、憲法第59条4項の「参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて60日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる」という規定をつかい、参議院で税制改正法案が否決されたと見なして、衆議院の3分の2で法案を再議決するという戦法をとりました。
 自民党のこの動きに対して民主党は、先日の山口2区補欠選挙の結果をもって、「民意を無視した暴挙だ!」とお怒りのようですが、この批判は的外れ。そもそも山口2区の結果だけを見て、そこに日本全体の民意が現れたと見るのは強引だし、自民党がとった手続きは憲法に沿ったもので、問題はありません。

 では、なぜ暫定税率をすぐに復活させる必要があったのか。「道路が必要だから」というのは、必要・不必要の基準がはっきりしないのでダメです。今回、自民党などがいちばん強調していたのは、国およびすべての自治体が、すでに暫定税率分の税収を見込んで予算を組んでしまっているという理由です。予算は民主的な手続きを経て可決されますから、補正予算という例外を除いて基本的に変更は許されず、法律と同等の強い拘束力を持ちます。そのため、予算案はとても綿密につくられます。首長や議員、その他のステークホルダーの意見をうまく取り入れ、最終的には歳出と歳入が一致するように編成します。この作業は、こっちを立てれればあっちが立たずといった感じで、すごく大変。しかも1年間の金の使い方をすべて決めちゃうわけですからとても重要です。暫定税率が期限切れを迎えたのは2008年3月31日でしたが、国も自治体も当然それが4月以降も延長されるものと考え、08年度予算を組んだわけですが、これが誤算でけっきょく期限切れになってしまった。 暫定税率が一時的に廃止された4月のあいだに、国は1200億円、地方は600億円の税収減となりました。つまり、国と地方あわせて1800億円分の道路整備・道路建設が執行できなくなったのです。08年度の道路特定財源のうち、暫定税率分は2兆5千億円程度。これが全部ストップしたら、道路はボロボロになり、地域経済を支える建設業も致命的なダメージを受ける。その最悪の事態を避けるために、一刻も早く暫定税率を復活させなければならない。簡単にまとめると、これが暫定税率復活派の論理です。

 次の投稿では、暫定税率廃止派の主張を見ていきます。

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朝日・読売vs日経―世論調査真っ二つ―

(マリン)

こいのぼりLOVE! マリンです。

 4月、5月って春の風が気持ちよくて、空も青いし高いし、最高の季節ですー。こいのぼりがパタパタ泳いでいるのを見ると、ますます気分いいです。あと、こいのぼりの顔も好きなんですよね。「僕なんも考えてませーん、ぱたぱた」って感じ。それに比べると五月人形はいかついですよね。「気合いの塊」って感じで暑苦しいわぁー。あんなのを居間に飾られた日にはたまらん。どちらも端午の節句のメーンキャラですが、僕は断然こいのぼり派ですね。ぱたぱた~。

 こいのぼりの爽やかさに比べて、どろどろーんとしている日本政治についてちょっと書きます。昨日のゲンダイモンダイのニュースのコーナーで触れた「衆院山口二区補選」について追記です。収録で「世論は暫定税率復活に対して意外に肯定的」と言いました。そのときソースにしたのが、4月21日の日経朝刊に掲載された世論調査(4月18-20日実施)です。その調査によれば、復活容認論が49%で、撤廃論の42%を上回ったとのことでした。

 でも、今日の朝日新聞の朝刊を見ると、山口2区補選について「税率復活に7割が反対―出口調査」という記事が。それで気になって少し調べてみると、朝日の世論調査では、全国でも「暫定税率の再可決反対」が63%だったそうです。 日経と朝日の世論調査の違いはNANDA? これはさらに調べないかんと思い、読売の世論調査についても調べてみました。 読売の4月15日朝刊に掲載された世論調査(4月12-13日実施)は、暫定税率復活「賛成」が30%、「反対」が61%でした。

 まとめると、朝日・読売では「復活反対」が多数、日経では「復活賛成」が多数と割れています。山口の結果などを参考にすると、やはり世論は「復活反対」になびいているようです。 ・・・ちょっと長くなったので今日のエントリーはこの辺にして、明日のエントリーでは、マリン視点から暫定税率復活の是非ついて論じてみたいと思いマース。

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